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院長コラム “やじろべえ” バックナンバー 2020年度

2020年4月

 ジャズトランペットのヴァーチュオーソ、帝王マイルス・デイビスにまつわる話をひとつ。
 マイルス率いるバンドの演奏中のこと。マイルスのソロのバックで、ピアノのハービー・ハンコックが間違ったコードを弾いてしまった。ハンコックは頭の中が真っ白になり、あとで大目玉をくらうことを覚悟した。ところが、マイルスは即座に自らの音を変え、ハンコックのコードが正しく聞こえるように修正し、何事もなかったように平然とプレイを続けたという。
 このエピソードが示唆することはこうだ。若手を叱責するのではなく、ハイレベルの技術を示すことによって反省とステップアップを促すという、リーダーシップの一理想を見ることができること。そして今ひとつは、ミスをミスとして安易に捨て去らず、そこに何かを感じ取り、プラスに転じる姿勢の大切さだ。マイルスの音楽に対する、このような自由で柔軟なアプローチは、実際に何度もジャズを変革していく原動力となったのである。
 日々の仕事や生活の中で、我々はあまたの異常事に遭遇する。明らかなミスやアクシデントだけでなく、なんとなくの違和感も含めて、様々なバリアンスが目の前を通過していく。これらに身構えて早めに芽を摘むのはひとつの対処法ではある。一方で、そこには重要なヒントが隠れているのではと考える視点を欠くべきではない。
 つまるところ「奇貨」である。奇貨を目にした時、忌まわしきものと排除するのではなく、何かのチャンスかもしれないと拾い上げるセンス。「目抜き通りを歩きつつ、道端の石ころや雑草を見落とさない」というような感覚だろうか。
 筆者が院長職に就いて2年が経った。この間、大きなトラブルをいくつも経験した。某スタッフから「持ってる院長」という不名誉な称号をいただきもした。リスクマネージメントには日頃の備えが大切であり、そのためにいくつもの奇貨をふところに入れて温めておく。その感性と反射神経を磨く。そしてストレスやコンフリクトをプラスと捉えられる楽観主義を持ち続ける。リーダーにとって必要なスキルにちがいない。
 令和2年は当院にとって創立70年目の節目の年である。次の10年はどんなものになるのだろう。スタッフの不安はつきないだろうが、明るい未来を示すことが院長の使命だ。そう自戒しながら、ともすれば険しい顔つきで病院内を歩いている自分に気づくたびに、こっそりと口角をつり上げるのである。
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